ナツメの実がならない原因と対策について紹介します。
ナツメは丈夫で育てやすいと言われていますが、特に大実ナツメの場合は実がならない、実がなってもせっかくなったナツメの実が落ちることがあります。
日本では古くからなつめの木が庭木として植えられていますが、意外と実をならせるための栽培方法については詳しく紹介されている情報が少ないですね。
色々調べてみたことと、実際にナツメを育てた中で経験したことを合わせて、ナツメの実がならない、ナツメの実が落ちる原因と対策について紹介します。
冒頭の写真は中国大実ナツメ、皇帝の完熟果です。
目次
ナツメの栽培について
ナツメはクロウメモドキ科の落葉高木で日本には奈良時代にはすでに伝わっていたとされています。
葉にはツヤツヤとした光沢があり、明るい黄緑色のナツメの若葉はとても美しいものです。
飛騨地方では古くからナツメを砂糖と醤油で煮付けたものを日常的に食べる習慣があるようです。
ナツメは現在の日本では果樹というよりは庭木として植えられていることが多く、商業的な果樹栽培は福井県で力を入れてナツメ栽培が行われているところがあるのと、あとは最近になってインドナツメを沖縄で栽培している情報を見かけますが、今のところはごく僅かな生産かと思います。
インドナツメはインドなどの東南アジア地域が原産で台湾で品種改良されたものが近年日本に輸入解禁になりました。
中国系のナツメ(シナナツメ)とは違い熱帯の植物で栽培には温度が必要なため日本でも沖縄など暖かい地域で栽培が行われています。
一般的に大実ナツメは中国原産のナツメになりますので、ここでは主に中国の大実ナツメについて書きます。
ナツメ栽培の本場は中国で、300種類以上の品種のナツメが栽培されています。
中国ではナツメを生薬としても使いますし、日常的にナツメを生食したり、干したナツメをお粥やスープに入れて料理して食べる習慣があります。
そのため大実ナツメの品種も色々あり、大きなものだと100gもある大きなナツメが採れる大実ナツメの品種もあり、栽培技術も発達しています。
和田ナツメ、金糸ナツメ、スーバージャイアント(大雪ナツメ)、新疆棗王、皇帝などが品種名としては日本でも目にするものでしょうか。
ナツメは乾燥に強く暑さ寒さに強いは本当か?
日本でナツメの育て方を調べてみても、暑さ寒さ、乾燥に強く育てやすい、と書かれているものがほとんどで、あまり詳しい情報がありません。
確かに庭木として日本に古来からある日本ナツメを庭木として育てるのであれば間違いではありません。
ナツメは丈夫で、暑さ寒さに強く、乾燥にも強く多少水切れしても葉が枯れたりすることはありません。
日本ナツメは実も小さいので、放任でもよくナツメの実がなります。
ただ、実際に中国の大実ナツメを育ててみると、どうもそうはいかないことがわかってきました。
花がたくさん咲いたとしてもその割に実がつかない。
鉢植えは水切れすると、葉が元気なのにすぐにナツメの実が萎む。
生理落下が多い。
そして気がつけば数個しかナツメの実がならない。
ナツメは暑さ寒さ、乾燥に強く放任でも実がたくさんなる、というのはどうも当てはまらず、鵜呑みにして放任にするとあまり大実ナツメの実がならない、なってもナツメの実が落ちるようだ、ということがわかってきました。
上の写真は水が足りなくて萎んでしまった鉢植え大実ナツメ皇帝の実。
順調に大きな実がなっていたのですが9月に一度涼しくなった後に、また急に猛暑が戻ってきたときの水やりが足りなかった様です。
大実ナツメの実がならない原因
大実ナツメの実がならない、大実ナツメの実が萎む、落ちる原因について少し時間をかけて中国のナツメ栽培の情報を調べてみました。
大実ナツメを実際に育てていて、こうするとナツメが調子がいい、と感じることとも大体あっているので、いくつかつきとめたナツメの実がならない原因を紹介します。
大実ナツメの実をしっかりならせたいなら、ナツメは思いのほかデリケートな果樹です。
気温や湿度、水、光、摘果、剪定。
ナツメの実がならない要素は結構色々ありますので順番に紹介します。
大実ナツメの実がならない原因①栽培適温
中国ではナツメは新疆の砂漠地区などで盛んに栽培されています。
この新疆は年間平均気温が4〜14℃(北部から南部まで)で、夏場でも一部の地域を除き、ほとんどの地域の平均気温は25℃より低いです。
ですから日本では割と涼しい地域の方が中国の大実ナツメは栽培しやすいということです。
ナツメの芽は17℃以上になると萌芽して枝分かれしたり葉が展開を始めます。
20℃〜22℃でナツメの花が咲き始めます。
ナツメの実が成熟する適温が18℃〜22℃くらいの間になります。
日本では20℃を超えてナツメの花が咲いた後、ナツメの実が膨らんでくる夏の日中の気温は30℃以上、関東でも酷暑になると35℃を超えてきますし、夜は熱帯夜で25℃以下にならない日が多いので、ナツメの実が熟すにはかなり暑いということになります。
この時期特に鉢植えの大実ナツメは水切れするとあっという間にナツメの実にシワがよって萎んできます。
早めに気づいてすぐに水をたっぷりやればまた水を吸って膨らむこともありますが、そのままダメになってしまうこともありますし、仮に元のように膨らんだように見えてもナツメの果実品質は落ちて、ジューシーさに欠けるナツメになってしまいます。
ナツメは暑さに強い、というのは木としては強くても、大実ナツメを果樹として栽培する条件としては当てはまらないことになります。
大実ナツメの実がならない原因②水やり
大実ナツメは実がなっているときに特に鉢植えで水が切れると実が萎んでしまうことを書きました。
ナツメが乾燥に強い、これも大実ナツメを栽培するにあたっては当てはまりません。
ナツメは水はけがよく肥沃で地下水位が高い場所が栽培に適しています。
ナツメの木そのものは暑さや乾燥に耐えられますが、ナツメの実の栽培には水が必要で、特にナツメを鉢植えで栽培する場合、水やりをしっかりすることでよい実がなります。
水が足りないということはナツメのよい実がならない、不作を意味します。
夏場は日中の暑い時間帯に葉水をたっぷりかけてやると、ナツメの葉や果実の温度も少しだけ下げることができます。
実際に夏場、ナツメの鉢植えには1日に2〜3回、鉢の表面が乾き始めたらすぐに水をたっぷり、葉水もかけてやることで、ナツメの実が萎んでシワがよったり、生理落下することが随分減りました。
夏場は鉢皿を強いて、少し鉢底に水をためてやると水切れを防げるのでおすすめです。
大実ナツメの実がならない原因③受粉の失敗
ナツメは自家受粉するので、1本の木で実がなります。
ただし、花が咲いたときに風が吹いていると、受粉がうまくいきません。
またもう1つ、受粉がうまくいかない原因があります。
それは湿度です。
開花期に乾燥していると受粉率が下がるので、ナツメの花が咲き始めて空気が乾燥していたら、風のない日を選び霧吹きで木全体に水をスプレーして周辺の湿度を高めてやります。
開花期間中は数日に1回繰り返し水をスプレーします。
ナツメ栽培には本当に水分は大事なんですね。
上の写真はナツメの花がよく咲いて満開のときに、霧吹きで水をスプレーしたところです。
この年は、ごくわずかに開花し始めたばかりの時期から毎朝ナツメの花に水をスプレーしました。
ここはベランダでとても乾燥するので、毎朝、また特に日差しが強くて風が吹いて乾燥する日は午後にも水をスプレーしました。
少々やりすぎかな?と思いながらも、乾燥に気を遣って繰り返し、ささっと水をスプレーしていました。
ナツメを育て始めて数年経ちますが、花に水をスプレーするのはこのシーズンが初めてでした。
結果、やはり効果があるようで結実率が例年とは大きく違っているのを感じました。
大実ナツメの実がならない原因④ナツメの実がなっても落ちる原因
ナツメの実がいい感じで大きくなってきたのに実が落ちる大きな原因は風です。
水切れの場合はナツメの実が枝についたままシワシワに萎みますが、ナツメの実が落ちる原因は主に風です。
ナツメは乾燥に強い木ですが、風には弱いのでなるべく風を避けるようにします。
特に開花時も風に当てない方がよく、またナツメの実がついてから成熟する前に風が多くなるとナツメの実が落ちるので、風の強い日は風除けをしたり、ナツメの鉢を風の当たらない場所に移動するなど気を付けましょう。
ある程度大きくなってきたナツメの実がポロポロと落ちるのはとても残念なことです。
ナツメの実の落下は風が吹いて数日経った後にも起こります。
大実ナツメの実がならない原因⑤ナツメに風は本当に大敵
開花期の水スプレーで今のところほとんどの花が受粉に成功しているのがわかります。
大実ナツメは落果もかなりあるので、このあとどのくらい実が残るか更なる経過観察が必要です。
Balcofarmのベランダは風が吹き荒れることがよくあるので、風対策もしつつ、水もしっかりやって、出来る限り予期せずナツメの実が落ちるのを阻止したいと思っていたのですが。。。
たくさんの花が受粉に成功して例年になく結実していた大実ナツメ。
この後、ナツメの実がもうちょっと大きくなってきた頃にものすごく気温が上がり、熱風の嵐が数日吹き荒れました。
そして風が吹いた後の数日の間に見事にナツメの実がぼろぼろと落ち、最初に咲いた花から残った実はわずか3個になってしまいました。
風が当たりにくいように少し鉢を移動したりしたのですが、風が熱く、そして強すぎました。
次のシーズンは風の吹く日はナツメの鉢だけは屋内に取り込みます。
熱風の嵐のために前年より収穫が少なくなってしまいましたが、その熱風後の暑さが落ち着いた時期にまた少しだけ花が咲いて、気がついたら夏の終わりに6個ほど、とてもよいナツメの実がなっていました。
熟す時期はその分遅くなりますが、おまけでなってくれたのはありがたいです。
しかもこれまでで一番立派で瑞々しい大きな実がなりました。
これは多分日々の水スプレーの効果もあるかと思います。
受粉については大きく前進しましたし、風対策、水やりでナツメの実の落下を可能な限り防ぎ、次シーズンは更なる大実ナツメの豊作を期待したいところです。
大実ナツメの実がならない原因⑤肥料切れ
ナツメの木はどのような土壌にも適応します。
酸性でもアルカリ性でも、荒れ地でも、乾燥した土でも、湿った土でも育ち、土に水が溜まっていてもドロドロにならないような能力もあります。
ただしよい実をならせるためには有機質に富んだ栄養豊富な土に植える必要があります。
鉢植えの場合は肥料切れになりがちなので、有機質をたっぷり混ぜ込んだ土に元肥、追肥をしっかり施肥していきます。
また、水やりで肥料分が流れてもまたナツメの根に吸収されて鉢に戻るように鉢皿を利用すると、水やりした水が鉢底にたまることで、底面給水のような役割を果たし、夏場の水の供給にも役立ちます。
大実ナツメの実がならない原因⑥隔年結果
大実ナツメの栽培には摘果も必要になります。
ナツメの枝に対して実がつきすぎると、ナツメの実が大きいだけに木の負担が大きいため、隔年結果になりやすく、その年はよくても翌年に実がならないことがあります。
中国ではナツメの営利栽培の技術にはどの枝に何個実を残すか、細かなやり方があるようですが、まずはナツメの木に対して実がたくさんつき過ぎていると感じる時は、1つの枝にナツメの実は多くて3個まで、と覚えておくとよいでしょう。
大実ナツメの栽培技術について
ナツメには1年で終わる落葉枝と、木質化した多年枝があり、多年枝についたナツメの実の方が大きくて品質のよい実がなります。
中国の営利栽培では積極的にこのナツメの枝についても剪定や摘果で結実をコントロールするようです。
またナツメは光を大変好むので、反射板を使って下からもナツメの木に光が当たるようにして栽培する方法もあるそうです。
大実ナツメを育てていて、どうもこれまで自分が目にしていた「なつめは暑さ寒さ、乾燥にも強く放任でも実がなる」という情報ではうまくいかないことが多く疑問に思ってきました。
改めてナツメについて色々調べてみてわかったナツメ栽培の本場の人達の大実ナツメの木の特性の理解、栽培の知恵、技術はこれまで全く目にしたことのないものでした。
家庭の果樹として大実ナツメの栽培を楽しむにはそこまでしなくても、これまでに紹介したナツメの実がならない原因について対策すればかなり結果がついてくるのではないかと思います。
地植えの場合は地下水脈が豊富な方がナツメの栽培には向いているようです。
鉢植えの場合は冬の落葉期にも土が乾き過ぎないよう、気をつけた方がよいでしょう。
今回調べてみて、いろいろな疑問が解消したこともあり、水分が抜けてしまってもいいからと、初めて1つだけ完全に熟させたナツメの実を収穫して食べてみましたが、この完熟した大実ナツメの味は予想していた以上に水分もあり、素晴らしく甘く美味しかったです。
またここから1年、2年と大実ナツメを育ててみた結果で、新たに気づいたことがあれば記事を更新していこうと思います。
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