いちじくは前年に伸びた枝につく夏果と今年伸びた新枝に秋果が実ります。
秋果の方がたくさんなりますし、夏果がならない品種もあります。
また、剪定の都合で前年枝を切り戻した場合は夏果は期待できません。
そんな中、いくつかの品種で夏果がついた年があったので、記録を兼ねて夏果の写真を紹介します。
目次
いちじくの夏果①バナーネの初夏果がなりました
いちじくの夏果を育てて楽しいのはバナーネでしょうか。
バナーネは夏秋兼用種なので夏果も秋果も実がなります。
バナーネの夏果は大きいものだと300g超にもなりますので、びっくりするような大きな実を収穫する楽しみがあります。
上の写真のバナーネは8号深鉢でベランダで育てているものです。
バナーネの夏果は細長く垂れ下がるような形をしているのが特徴です。
鉢植えですし、さらに今年はあまり日当たりもよくない場所に置いているので、300gの大果を期待することはできませんが、それでも大きな、バナーネらしい形の夏果が実りました。
バナーネは熟すと緑からやや黄色っぽく色が変わってくる白いちじくになります。
いちじくの夏果②バナーネの夏果実食
バナーネの夏果は甘みが乗るまでじっくり待って収穫します。
この年はこの状態で7月10日に収穫したのですが、この状態ではまだ早いくらいでした。
実がうんと柔らかくなって落ちる寸前くらいまで待つのがおすすめです。
そのくらいまで待つと実が透明感のある蜜状になって甘味もしっかり感じられるようになります。
上の写真だと、バナーネの実の下の方がわずかに透明感のある蜜状になっているにとどまります。
なので実食したらやっぱり上の方はあまり甘味はなく、下の方だけが甘かったです。
基本的にバナーネの夏果は秋果に比べて水分が多く、ごくさっぱりした味わいになります。
日当たりが十分だとその甘味もかなりしっかりしてきますが、それでも水分は多めです。
日陰だったり天気が悪いと水っぽい、と感じる人もいるようですが、それはそれで夏の暑い時期に喉を潤す感じで食べられるので、ねっとり濃厚ないちじくの味に慣れた人でもさっぱりとした味の変化を楽しむのによい品種です。
バナーネの秋果は夏果ほど大きくはなく、形も普通のいちじくのようになりますが、濃厚な秋果いちじくの味になりますので、バナーネが1本あれば夏果と秋果ではっきり違う2つの味を楽しむことができます。
また、バナーネは樹形は直立性が強く、葉も細葉なので場所をとらず、水やりも他のいちじくより少なくて済む、と言う点で、家庭菜園にはおすすめの品種になります。
初心者には扱いやすい、育てやすいいちじくです。
いちじくの夏果③ノアールシュクレの初夏果
黒いちじく、ノアールシュクレの初夏果、まだ熟していく途中の色です。
写真右上の小さな緑色の実は秋果です。
Balcofarmは既に鉢植えの植物がジャングル状態で十分なスペースがないので、ノアールシュクレは限りなくコンパクトに育てようと、挿し木した翌年の鉢上げで4号鉢に植え付けて育てています。
それでもこの小さな木に秋果もたくさんなっていて、実つきがとてもよいです。
地上部はだいぶ育ってきましたが、まあまあ大人しく4号鉢に収まってくれているので、それほど樹勢は強くない品種のようです。
いちじくの夏果④ノアールシュクレの夏果実食
完熟したノアールシュクレの夏果。
やっぱり黒いちじくのこの黒さを見るのは楽しいものです。
ノアールシュクレはどういう品種かあまり情報がない中で育て始めたのですが、この真っ黒な夏果をみて育ててよかったと思いました。
樹勢が強くないことも、ベランダで育てるには助かります。
ちなみに一般に果物としてスーパーなどで流通しているいちじくは舛井ドーフィンと言う品種で、これは赤いちじくの部類になります。
舛井ドーフィンは果皮が部分的に色づいていて白いちじくでもないし黒いちじくでもない、中間の色をしています。
待ちきれずに早めにいちじくの実を収穫してしまったのですが、ノーアルシュクレの夏果はこのくらいの熟し方でも十分甘みがあり、美味しかったです。
この年は6月下旬の収穫でした。
酸味はほとんどなく、優しい甘味と食感の夏果でした。
こんなに小さい木でもこれだけ安心感のある味であれば、もう少し育った来年以降はさらに美味しさを期待できます。
鉢が小さいので実も小さめですが、秋果はおそらくさらに糖度も上がりねっとりしてくるかと思うので、また秋果の味の違いを楽しみにこの後も育てます。
いちじくの夏果⑤アルマの夏果
いちじく、アルマの夏果です。
既に黄色くなっている下の2つは前年果が冬越ししたものです。
こちらは中身がカスカスで食べられませんでした。
一番大きな緑色の実が夏果です。
写真はこの年の5月17日現在で、まだまだ緑色で硬いです。
この前年、アルマの夏果がとても美味しかったので今シーズンの収穫を楽しみにしていました。
アルマは日本国内で知られているものは黄緑色の実ですが、海外のものは白いちじくではないような写真も散見されたのですが、アルマが開発されたテキサス州の農業大学の資料で、アルマは間違いなく黄緑色の実であることがわかり、ますますこの品種が好きになりました。
別記事でその資料のリンクを紹介しています。
いちじくの夏果⑥アルマの夏果実食
上の緑色のアルマが熟したものを収穫しました。
6月26日です。
こちらも待ちきれず少し早めに収穫してしまいました。
この年、6月に記録的な暑さで熱風が吹き荒れ、かなりの植物が影響を受けました。
そのため、前年のアルマの夏果はもっと果皮が薄く艶があり、みずみずしくつるっとした状態だったのですが、今年の果皮は前年よりも少し厚みがあり、触った時もかさかさした感じでした。
前年は皮ごと食べても美味しかったアルマの夏果ですが、この年は残念ながら皮を剥いて食べました。
少し早めの収穫だったのですが、アルマはこの状態で十分に美味しい、味に安定感のある品種です。
果肉の味は前年と変わらず、少しだけ酸味があって爽やかな軽い感じの甘味がありました。
木の樹勢もあまり強くなく、小さなうちからよく実がなりますし、味もよいので、おすすめの品種です。
いちじくの夏果⑦ブランシュ・ダルジャンティユ、大望の初夏果
ブランシュ・ダルジャンティユは入手しにくい品種のいちじくですが、豊産でとても美味しい品種です。
Balcofarmもかなりお高い苗を清水の舞台から飛び降りるつもりで入手しました。
前年に初の秋果を収穫して、改めて入手してよかったと思ったので、大切に育てています。
挿し木2年生の苗を入手したため、翌年は大きく切り戻し剪定をしました。
そのため夏果は一切期待していなかったのですが、大きく切り戻したとても低い位置にも夏果が3個もついたので、本当に豊産性の品種ですね。
樹勢があまり強くなく、その分挿し木で苗を増やすのも他の品種ほど簡単ではないのですが、樹勢が控えめ、豊産で味もよい、夏果もよくなる、と言うのは限られたスペースで鉢植えで育てるには素晴らしい長所になります。
いちじくの夏果⑧ブランシュ・ダルジャンティユの夏果実食
右の大きいのはバナーネ、左がブランシュ・ダルジャンティユの夏果です。
この記事のトップ、3つのいちじくがなっている写真はブランシュ・ダルジャンティユの夏果の写真です。
そのうちの2個は6月の熱風で痛んでしまい、残念ながらあまり品質がよくありませんでした。
最後の1つは一番大きく綺麗に熟したので、美味しく食べることができました。
ブランシュ・ダルジャンティユは果肉が滑らかで上品な甘さと口当たりのいちじくです。
果肉の上の方の白い部分も美味しく食べられます。
ブランシュ・ダルジャンティユは夏果でもしっかり甘味ものっていて、他の品種と比べて秋果との味の違いも比較的少ないように思いました。
いちじくはその年の気候によって全然状態が変わりますので、たまたま今年だけのことかもしれません。
来年も夏果がなったら味比べをしようと思います。
ブランシュ・ダルジャンティユはとても上品な優しい甘さと食感で、口当たりがよいので安心して食べられる、本当に美味しいいちじくです。
親木の保存のために保険として、前年冬に大きく切り戻したブランシュ・ダルジャンティユの1本の枝を3つに分けて挿し木にしました。
一番根本の太い部分は割と早くに活着して順調に育ち始めました。
真ん中と一番先端に近い側の挿し穂は枯れはしないものの、6月になってもさっぱり芽がでず、うんともすんとも変化がないので、諦めようかと思ったのですが、生きてはいるので、試しに6月中旬頃に少し肥料をやったらようやく芽が動き始めて葉が出てきました。
ちょうど記録的な高温になったこともよかったのかもしれません。
他のいちじくだとあまりそう言うことはなく、枝のどの部分を使ってもどんどん芽が出て成長してくれることがほとんどです。
ここで育てているいちじくの中ではブランシュ・ダルジャンティユは一番樹勢が弱いので、挿し木にもその性質が反映されているように思いました。
最後に。いちじくを育てるなら品種特性をよく考えて
さて、この年はいくつかの品種でいちじくの夏果を収穫できたので、記録を兼ねて紹介しました。
改めて思うのは、いちじくを育てるとき、樹勢の強弱はよく考える必要がある、と言うことです。
広い庭や畑があって場所には困らない、と言う場合は樹勢の強い品種も地植えにできるので、全く問題ないと思いますが、庭が狭かったり、鉢植えでベランダなどで育てたい場合、樹勢の強い品種はかなり手間がかかるし、注意が必要だと言うことです。
いちじくの樹勢が強いと言うのは地上部のことだけではすみません。
地上部が育つ=根も広がるわけですので、樹勢が強いと言うことは根も物凄い勢いで広がる、と言うことです。
建築物の近くにいちじくを地植えにすれば、家の土台や側溝をいちじくの根が押しのけたり突き破るのは時間の問題です。
鉢植えでもあっという間に鉢にいちじくの根がまわってパンパンになり、タイミングを逃すと植え替えしようにも鉢から引き抜けない、と言うこともしばしばです。
ですから個人的にはいちじくはまずは鉢植えで育てることをお勧めします。
そしてある程度、そのいちじくの特性を理解してから地植えを検討されるとよいでしょう。
参考まで、樹勢が強いと言われているいちじくの中で、よく知られているのは蓬莱柿、ビオレソリエスなどです。
またここで育てているアイーダ・ブラックもビオレソリエスほどではありませんが樹勢が強い品種です。