うどんこ病は家庭菜園を行う際に避けては通れない植物の病気です。
植物がうどんこ病にかかると、葉の光合成を妨げられ黄色く変色し、縮れたり枯れたりすることがあります。
放置すると、その植物全体や他の植物にも広がり影響を及ぼす可能性があります。
そこで、うどんこ病を見つけた時にはどのように対処すればよいのか、また予防のために何ができるのか、身近な酢や重曹、石灰、草木灰などの利用方法を紹介します。
目次
うどんこ病とは
名前の通りうどんの粉がぱっと散ったような白い粉が葉や茎に現れます。
真っ白な粉ですので、初めてみた人でも、見間違えることなく
「これがうどんこ病か!」
と、すぐにわかると思います。
うどんこ病はカビの菌の一種が引き起こす病気で、広がってしまうと厄介です。
農薬などを使うと、その時は効果があっても耐性菌が発生するため、農家でも殺菌剤を複数用意してローテーションして使うのが一般的です。
うどんこ病がいかに厄介かがよくわかりますね。
農林水産省によるとうどんこ病については様々な対策が研究されていて、近年では紫外線を照射することでうどんこ病を防除する方法や、特にいちごの苗は高温に耐える特性があることから湿度100%の蒸気の熱でうどんこ病の菌をやっつける装置も開発されているようです。
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農薬を使わなくていいのならそれに越したことはありませんが、残念ながらこれらの方法は営利農業のための設備ですので、家庭菜園では利用することができません。
ただし、一時的に温度を上げることについては家庭菜園でも少し応用して使える可能性がゼロではないかもしれませんね。
うどんこ病が出やすくなる環境
うどんこ病は風でカビの胞子が飛び散ることで感染します。
空気が乾燥していて温度が20℃前後だと飛んできた胞子が発芽してうどんこ病が発生しやすいです。
逆に30℃以上になるとうどんこ病は発生しなくなります。
30℃になったからといってカビの胞子が死滅するわけではなく、発芽しないだけなので油断は禁物です。
うどんこ病対策①お湯で葉水をかける
うどんこ病は水が苦手で空気が乾燥すると出やすくなるため、時々葉水をかけてやるとうどんこ病の防除になります。
その時、水ではなくお湯をさっとかけてやるとさらに効果が高まります。
温度の目安は植物を傷めないために50℃を目安にします。
植物に一時的に温度をかけることで、植物はその刺激に様々な反応をする中で元気になるようです。
実際、野菜を50℃のお湯で洗うと葉物などはパリッと元気になる、というのをご存知の方もいらっしゃると思います。
ただし、それ以上の温度のお湯をかけたり、お湯の温度が50℃だったとしても長時間植物の葉がお湯に浸るような状態だと、熱で葉が痛み茶色くなってきますので短時間でさっと済ませるよう気をつけます。
お湯、または水をかける時に葉の表面についた白い粉を擦り落として洗い流すのはさらに有効な方法です。
この方法で使うのはただの水なので、うどんこ病が出たときはこまめに葉を洗ってやるようにして様子をみます。
うどんこ病対策②重曹を薄めてスプレーする
うどんこ病になってしまった部分に重曹を水に溶かしたものをスプレーします。
ごく初期のうどんこ病対策としては有効です。
濃度は1000倍、つまり1gの重曹に1リットルの水が基本です。
重曹の濃度が濃いと、植物の色が濃くなったり、枯れ込んだりしますので注意が必要です。
重曹自体は食品としても使われる安全なものですので家庭菜園でも安心して使えます。
重曹はしっかり水に溶かしてから、散布しないとスプレー容器が詰まることがあります。
スプレーが詰まってしまった場合、スプレーの出が悪くなったくらいなら水をたっぷり入れてスプレーを繰り返したり、そのまましばらく置いておくと、詰まっていた重曹の粉が溶けて、また使えるようになることもあるので、試してみてください。
重曹を1000倍にまで薄めれば大抵はしっかり溶けますので大丈夫だと思います。
スプレー容器は使用後、重曹水を捨て、ただの水を入れてスプレーを何度か繰り返し、中の管に残った重曹水が完全に抜けるようにします。
うどんこ病対策③酢を薄めてスプレーする
うどんこ病になった植物の葉に酢を水で薄めてスプレーします。
酢には酢酸の殺菌作用がある上に、アミノ酸なども含んでいることから昔から家庭菜園でよく使われてきました。
こちらは濃度については様々な情報があります。
下は1000倍希釈から、濃いと3〜5倍希釈くらいまでの濃度を紹介している情報を目にしたことがあります。
酢も食品として身近で安全なものですから、ご自分で効果があると感じられる濃度を探されてみるのが一番かと思います。
うどんこ病が出てしまった場合には目安として20倍に薄めたくらいの酢水をたっぷり散布するのがよいかと思います。
ただしこれは酢の濃度がかなり高いので、病気が出ている部分だけにするか、全体にスプレーするなら、酢水をスプレーした後しばらく置いた後、水を散布して濃い酢の成分を洗い流すのが無難です。
予防のためには濃すぎるとかえって葉が痛むこともあるので500倍から1000倍くらいに薄めた酢水を普段から散布すると植物が元気に育ちます。
うどんこ病対策④農薬
一口に農薬、といっても最近は家庭菜園用に自然なものでできた薬剤も色々販売されています。
商品名になりますが、住友化学園芸から発売されているうどんこ病や灰色かび病用の「カリグリーン」とか「ベニカマイルドスプレー」は有機栽培でも使える農薬です。
酢や重曹はどっちも効き目が穏やかなのでうどんこ病のごく初期であれば使えますが、明らかにうどんこ病にかかっている、うどんこ病が広がっている状態になってしまってからはこういった農薬を使うのも一つの方法です。
最近は食品成分で作られている農薬で、収穫当日でも使うことができて、何度でも使えるものがありますから、そういったものをこまめにかけてやるのもおすすめです。
うどんこ病対策⑤草木灰で植物組織を元気に育てる
草木灰の成分にはカリや酸化カルシウムが含まれており、それが植物の肥料として吸収されることで植物自体が丈夫になり病害虫にかかりにくくなる、と言われています。
カリは根肥、カルシウムは植物体の組織を健康で丈夫にします。
どのような草木を燃やして作ったかによって、酸化カルシウムの含有量が違っていて、その含有量が多い方がアルカリ度が高くなります。
一般的には木を燃やしたものの方が酸化カルシウムが多く含まれ、草を燃やしたものには酸化カルシウムがあまり含まれていません。
草木灰は土壌改良剤として、土の酸度を調整するためのアルカリ資材としても用いられます。
植物の生育もうどんこ病の発生も、天候などの影響もありますが、予防のためになるべく植物を丈夫に育てるのが基本でしょうか。
まあ、それでも病気や虫の害が出るときは出てしまうのですが。
うどんこ病対策⑥石灰は土と植物を元気にする
石灰には生石灰、消石灰、苦土石灰、有機石灰など色々な種類がありますが、肥料や土壌改良剤として用いられるのは苦土石灰や有機石灰になります。
石灰の主な成分は炭酸カルシウムで苦土石灰はドロマイトという鉱物が原料の石灰にマグネシウムが含まれているものになります。
苦土はマグネシウムのことです。
有機石灰は卵の殻や貝殻を粉末にしたもので、牡蠣殻石灰はよく目にすることが多いですね。
石灰類は土壌改良剤として酸性に傾いた土壌を中和するために用いられるものですが、それだけではなくカルシウム肥料としての効果もあります。
また苦土石灰のマグネシウムも植物が健康に育つ微量要素として重要な成分です。
植物の植え付け前に土に適量を混ぜ込むことで、カルシウムが植物組織を強く健康にすることから、うどんこ病になりにくい植物体を育てることができる、という予防としてのうどんこ病対策にもなります。
ただし、石灰類は土壌をアルカリ性に寄せますので、酸性土壌を好む野菜や果樹にはあまり向きません。
ブルーベリーやじゃがいも、いちご、ばらなどは酸性土を好むため、石灰を使うと影響が出ます。
その場合は土壌の酸度を変えないカルシウム肥料として、硫酸カルシウムなどがありますのでカルシウム肥料をやりたい場合はそういったものを使います。
ちなみに硫酸カルシウムは鉱物の石膏が原料です。
化学薬品ではありませんのでご安心を(笑)
うどんこ病対策⑦窒素過多にならないように
植物が窒素過多で植物体が柔らかく徒長気味だとうどんこ病が出やすくなります。
普段から肥料のやりすぎ、特に窒素過多に気をつけます。
プランターの場合は水やりで養分が流出していくので、もし窒素過多だなと思った時は追肥を控えたり、追肥するときもリン酸やカリの単肥だけを与えれば次第に窒素過多の状態も抜けていきます。
地面の場合も日本は雨が多いため、プランターほどのスピードではありませんが雨で徐々に養分は流れていきます。
追肥を控えめにして葉物野菜を栽培したりして、土のバランスを考えながら野菜の栽培を楽しむことでうどんこ病の予防に努めましょう。
うどんこ病が出やすいのはいちご、きゅうり、他には?
最後にうどんこ病が出やすい野菜や果樹を簡単にまとめておきます。
うどんこ病は様々な野菜や果樹に見られます。
中でもいちごや、きゅうりやスイカ、かぼちゃなどの瓜類、果樹ならリンゴやぶどう、梨。
有名どころではバラのうどんこ病は栽培者泣かせです。
うどんこ病にはいくつか菌の種類があって、菌によって繁殖する植物が違っていたりします。
例えばきゅうりを栽培してうどんこ病が出た場所は、次は別の作物を育てるようにすれば、連作障害だけではなく、うどんこ病の対策にもなります。
うどんこ病の対策で大事なこと
うどんこ病の対策で大事なのはとにかく初期段階で見つけてすぐに上記のような方法で対処すること。
表面にうどんこ病の白い粉がぽわっと出ただけでなく葉が黄変したり内部が乾いて硬くなるまで菌が植物体に入り込んでしまった部分は切除すること。
うどんこ病の粉を周囲に散らさないようにそっと扱うこと。
症状がひどいものは他への拡散を防止するために残念だけど株ごと処分すること。
これに尽きるでしょうか。