ひじきは鉄分豊富な海の植物、海藻として知られています。
ひじきはレバーが苦手な人でも食べられる、鉄分の補給源になる数少ない食材の1つですが、2015年に文部科学省が改定した食品成分表で、ひじきの鉄分についてこれまでとは違う新しい情報が記載されるようになりました。
その内容を知らずにひじきを食べていると、鉄分をしっかり取りたいのに、十分な鉄分が取れていない、なんてことになる可能性もありますのでこの記事ではひじきの鉄分について紹介します。
目次
ひじきの種類
ひじきは海藻のうち、褐藻類に分類されます。
その名の通り褐色、あるいはやや緑がかった褐色の海藻で、日本で広く収穫されています。
私たちの食卓に上がるひじきには芽ひじき、長ひじき、寒ひじきなどがあります。
上の写真は芽ひじきになります。
芽ひじきはひじきの葉の部分、長ひじきは茎の部分のことで、寒ひじきは冬の寒い時期に採ったものをさします。
通常ひじきは成長期である春、3月から5月にかけて収穫されますが、寒ひじきは1月から3月、まだ若いひじきを刈り取ります。
寒ひじきは春に取ったひじきよりも引き締まった食感でややシャキシャキしている感じです。
芽ひじきは柔らかく細かいので、和えものなどに使いやすく、長ひじきは茎が長いままの部分もあるので、水で戻した後、適当な長さに切って使います。
長ひじきは芽ひじきよりも食感もしっかりしているので煮物や炒め物などに向いています。
また、ひじきの取れる地域によってもひじきの色あいや太さ、食感が違うものがあり、特に沖縄産のひじきは太くて食感は本州で取れるひじきと比較して柔らかいです。
これらの違いを踏まえて好みのひじきを選びます。
ひじきの鉄分は減ったのか?
ひじきの鉄分は乾燥ひじき100gあたり55mgと言われてきました。
ひじきを煮物にすると1人が1回に食べる量は乾燥ひじき4gから7g程度ですので、1回あたり2.2mgから3.8mg程度の鉄分を取れることになります。
煮物のひじきを小鉢で食べるだけでかなりの鉄分をとれることになるため、特に貧血の予防などで鉄分を取りたい場合にひじきは貴重な食材です。
ところが、2015年に発表された文部科学省の食品成分表によると、乾燥ひじきの鉄分は100gあたり6.2mgしかなく、1回に7gの乾燥ひじきを食べたとして、摂取できる鉄分がわずか0.4mgということになってしまったのです。
ひじきの鉄分が減った数値が発表された当時は日経新聞などでも記事になるなど、話題になりました。
ひじきの鉄分が減った理由
ひじきの天日干しの様子
ひじきの鉄分の数値が減ってしまい、それまでとは大きく違うことになったのには理由がありました。
ひじきは海から採ってきたら、すぐに数時間、長い場合で6時間ほど窯で煮る、あるいは蒸してから1昼夜そのまま窯の中で寝かせ、そのあとに乾燥させます。
この乾燥した状態のものが保存食、乾物として私たちが手にする食材としてのひじきです。
このひじきを煮る工程で使われている窯がひじきの鉄分に関わる重要なポイントになっていたのです。
古来からある方法ではひじきは大きな鉄窯で薪を焚いた火で長時間煮るのですが、近年はその耐久性からステンレス製の窯を使っているものが多くなりました。
このひじきを煮る工程で窯から溶出する鉄分が違うために、ひじきの鉄分含有量に大きな違いが出る、ということがわかってきたのだそうです。
そのため現在の食品成分表では乾燥ひじきについては鉄窯で焚いたものと、ステンレス窯で焚いたもの、それぞれの数値が記載されています。
下記文部科学省の食品成分データーベースでひじきについて検索して内容をみることができます。
それによると、ステンレス窯で炊いた乾燥ひじきの鉄分含有量は100gあたり6.2mg、鉄窯で炊いた乾燥ひじきは100gあたり58mgの鉄分を含んており、その他の成分はごくわずかな違いしかみられません。
ひじきには鉄分以外にも食物繊維やカリウム、カルシウムなどのミネラルが豊富に含まれているので、特に鉄分を意識する必要がなければ、どちらの窯で炊かれたひじきも十分な栄養素を含んでいると考えてよいことになります。
鉄鍋などからの鉄分溶出について
鉄窯を使うことでそれほど鉄分に違いが出るのか、と驚かれる方も多いかもしれませんが、ひじきをを鉄窯に入れて煮る時間は長く、そのまま火を止めた後も一昼夜蒸らすために鉄窯の中でひじきを置いておきますので、その分より多くの鉄分が溶出することが考えられます。
鉄の鍋などの調理器具を使うと溶け出した鉄分を摂取することになるため貧血の予防になる、ということは昔から知られていることです。
鉄の調理器具というと、フライパンや中華鍋の他にもダッチオーブンやスキレット、煮込み鍋、鉄瓶などがあり、特に岩手県の伝統工芸品でもある南部鉄器は有名です。
実際に何か科学的なデータはないのか調べてみたところ、南部鉄器は体に吸収されやすい二価鉄の形で鉄分が溶出されるという実験データの論文がありました。
こちらの論文(PDF形式)にビーフシチューや味噌汁を作ったときに実際にどのくらいの鉄分が鉄鍋から溶出したかの実験データがまとめられています。
塩分や、酸性の調味料、特に酢を使うと鉄鍋からの鉄分の溶出量が多くなるのと、調理後も味噌汁を鍋に入れたまま2時間置いておくと鉄分の溶出量がかなり増える、というデータがあり興味深い内容でした。
ひじきは海から上がった直後の状態では塩分を多く含み、鉄窯で長時間煮た後、さらに鉄窯の中に長時間入れられたままの状態になるので、ひじきに鉄釜の鉄分が多く溶出するのもなるほど、と思える参考になる資料でした。
鉄鍋については迷信などではなく、確かに鉄分を摂取できることがわかったので、Balcofarmでもいくつかの鉄鍋や鉄瓶を使ってみることにしました。
鉄鍋などは錆びないように手入れをして使いますが、さほど手間はかかりませんし、実際鉄分のこと以外にも、食材の火の通りがよく、美味しく料理が仕上がるので、すっかり鉄鍋、鉄瓶にはまっています。
機会があれば鉄鍋のお手入れなどについても記事で紹介できればと思っています。
ひじきの鉄分を効率よく取り入れるために
さて、鉄窯で煮たひじきの鉄分は以前と変わらずたっぷりあることがわかったところで、さらにその鉄分を効果的に摂取するための方法を少し紹介します。
鉄分にはレバーや赤身肉に含まれるヘム鉄と、ひじきや大豆、ほうれん草、小松菜などに含まれる非ヘム鉄があります。
ヘム鉄の吸収率は非ヘム鉄より5倍程度高いことがわかっていますので、効率よく鉄分を摂りたい場合は、積極的に動物性の赤身を取るのがおすすめです。
ただし体に必要な鉄分の全てをヘム鉄で摂るのは非ヘム鉄も上手に組み合わせる必要があります。
非ヘム鉄であっても、鉄分はビタミンCやタンパク質と一緒に摂ることで吸収率が高まりますので、調理を工夫することで非ヘム鉄でも吸収率を高めることができます。
乾燥ひじきを水で戻した後、茹でたり軽く味付けして煮たものを豆腐などと和風サラダにしてレモンやスダチを絞ったりするのはとてもよい組み合わせです。
また大豆はタンパク質も豊富でありながら、実は鉄分も乾燥大豆100gあたりに6〜9mg(産地によって異なる)含まれていますので、ひじきの煮物を作る時、ぜひ大豆も組み合わせて入れましょう。
甘辛く煮る味の相性もよく、鉄分を摂取するための組み合わせとしても最高です。
さらにレバーが食べられる人は、ひじきの煮物を作るときに、鶏レバーを水にさらしてよく血抜きしたものを小さく切ったものを少し加えると、鉄分も強化され、タンパク質も一緒に取れるのでおすすめです。
鶏のレバーは新鮮なものをしっかり血抜きして、生姜の千切りを多めに加えると、臭みもなく、生姜の香りのよい、こくのある美味しいひじきの煮物になります。
レバーは好き嫌いが分かれる食べ物ですが、大丈夫な方はよかったら試してみてください。