いちじく(無花果)の挿し木、失敗のポイントと水挿しの発根、植え替えの時期と方法について詳しく紹介します。
いちじくの挿し木は成功率がとても高く、成長も旺盛なので初めての方でも楽しみながら苗木を育てられますのでぜひチャレンジしてみてください。
いちじくの挿し木に使う挿し穂の写真も紹介しています。
上の写真の挿し木いちじくの品種はビオレソリエスです。
比較的新しい品種の中でも美味しいと人気の品種のいちじくです。
いちじくの挿し木のメリットは挿し木から育てても比較的早く結実する果樹であること、またいちじくに限らず新しい人気品種の果樹苗は買うと値段も高いので、いちじくの木を剪定した時に出る枝を分けてもらって挿し木から育てれば、費用もセーブできるという二つのことがあげられます。
いちじくは品種ごとの魅力があり、いろいろな品種を育てられると楽しいので挿し木はおすすめの方法です。
目次
いちじくの挿し木①初めてでも失敗が少ない
いちじくは生命力が強いので挿し木からよく育ち、あまり失敗することもなく簡単に増やすことができます。
いちじくの挿し木の成功率は90%以上と言われ、特に樹勢の強い品種であれば100%に近い確率で発根させることができます。
挿し木のよい点は親と同じ品質のいちじくの木を育てることができること。
いちじくは毎年剪定枝が出ますので、挿し木するための挿し穂を入手しやすいという利点もあります。
よい実がなるいちじくの木の剪定枝で挿し木をすれば、同じいちじくの実を収穫することができます。
いちじくを長く鉢植えで育てているとそのうち実つきが落ちてきたり、大きくなりすぎてこれ以上は置き場に困る、というふうになってきたりするので、挿し木して新しいいちじくの若木を養成すれば同じいちじくの木で途切れることなく上手に世代交代させることができます。
いちじくの挿し木②挿し穂は冬の剪定枝を利用するのが基本
いちじくは基本的には毎年11月以降の冬の休眠期に剪定をします。
この時、切り落とした枝を挿し木として利用します。
真夏と真冬を避ければいちじくの挿し木は割といつでもできるのですが、休眠期の枝は来年成長するための養分を蓄えている状態ですので、そのような状態の枝を使った挿し木は、発根した後の成長が、葉が青々と繁っている時期の枝を使った挿し木より勢いがあります。
いちじくの挿し木は前年に伸びた枝を使います。前々年の枝も挿し木できます。
夏秋兼用種のいちじくの場合、前年枝は次の春以降夏果の結果枝になるので、もし夏果を収穫したいなら、何本かは剪定しないで残しておきましょう。
剪定したいちじくの枝は挿し木をするときには長さ20cm〜30cmのものを用いて、挿し穂として形を整えます。
一つのさし穂には必ず2〜3芽の節があるようにします。
冒頭の写真の枝もしっかり3芽ついています。
芽のついた節のすぐ下から発根しますので発芽させる節と発芽させる芽の節とで、合わせて最低でも2節が必要です。
あまり短いと発芽のために枝に蓄えられた養分も少ないのである程度の長さ、20cmくらいは確保しましょう。
慣れてきたら挿し穂がもっと短くても成功させることができると思います。
Balcofarmも挿し穂が長いとその分大きな鉢を用意しないといけないので、割と短めに挿し穂を調整したりしますが、それでもいちじくの挿し木は成功率が高いです。
いちじくの挿し木③挿し木の時期は2月中旬から3月
いちじくの挿し木の適期は冬の終わりの時期、植物が休眠から覚める直前です。
2月中旬から3月にかけてが挿し木の適期になります。
この時期に挿し木することでその後4月5月の成長期に株をしっかり成長させることができます。
いちじくの剪定は木が活動を停止する11月か12月に行うのが一般的ですので、剪定して得た挿し木の枝を挿し木の適期が来るまでの冬の間、湿度をたもった状態で保存しておきます。
もう1つの方法は2月か3月になってからいちじくの枝を剪定して挿し穂をとり、すぐに挿し木する方法です。
剪定の都合との兼ね合いになりますが、いちじくの挿し木はさし穂が新鮮な方がより成功率が高いので、2月か3月に挿し穂を取るのもおすすめです。
いちじくの挿し木④挿し木の枝の保存方法
冬剪定の場合、剪定してからいちじくを挿し木にする適期までは時間があります。
その間剪定したいちじくの枝を枯らさないように保存しておく必要があります。
基本的にいちじくは丈夫なので乾かなければよいのですが、貴重な品種などは何が何でもしっかり活着させたいところですよね。
そのためにできることを紹介しておきます。
- なるべく乾燥させないために、剪定した枝は可能なら長いまま保存します。
- 枝の上側の切り口には乾燥による枯れ込みと病気を防ぐためにトップジンmやカルスメイトなどの癒合剤を塗ります。
- 保湿の役目を果たしてくれる軽く湿らせた新聞紙に包み、ビニール袋に入れます。
- この状態で冷暗所で保存します。
冷蔵庫の野菜箱などで保存するとよいでしょう。
枝の下側は土に挿して発根させる側なので癒合剤は塗らず、乾かないように湿らせた新聞紙で包みます。
写真の右下の小さな包みは乾燥防止のために水で濡らしたゼオライトを新聞紙で包んで一緒にビニール袋の中に入れたものです。
この状態で冷蔵庫の野菜箱に保存します。
いちじくの挿し木⑤挿し木の保存を兼ねた水挿しもおすすめ
もう1つのいちじくの挿し木の枝の保存方法としておすすめなのが水挿しです。
いちじくの挿し木用の挿し穂を冷蔵保存して休眠させるのではなく、そのままコップやペットボトルの水に挿して毎日水を変えながら暖かくなるまで置いておき、春以降十分に暖かくなってから土に植える方法です。
冬でも水に挿しておくと室内の暖かい場所なら3週間程度で発根し始めます。
水挿ししたいちじくを入れたペットボトルなどの容器の水をこまめに替えながら置いておくと根が伸びて、春になって葉も展開するようになります。
いちじくの挿し木苗は小さいうちは寒さにも弱いので、2月ごろに挿し木したものの場合、5月以降十分に温度が上がり寒さの心配がない時期になってから、十分に発根したいちじくの挿し木苗を土に植えつけます。
窓辺で日光に当てながら、展開したいちじくの葉に大きさと厚みが出てしっかりしてきてから植え付けるとなおよいです。
この時、最初は小さなポットなどに肥料を入れずに発根したいちじくの水挿し苗を植えます。
最初は日陰に置き、毎日水をやって、少しずつ日光に慣らしていきます。
ポットに植えてからいちじくの新しい葉がぐんぐん伸び始めてから少しずつ肥料を与えます。
いちじくの挿し木が完全に活着して、ポットに根がいっぱいに回ってきたら、腐葉土や肥料分を前込んだ用土を準備して、徐々に大きな鉢に植え替えていきます。
植え替えは焦らないのがポイントで、早いよりは遅い方が失敗がありません。
いちじくの挿し木苗の成長具合にもよりますが、6月、もっと遅くて7月になってからの方がよい場合もあります。
用土や植え替えについては⑪で紹介していますのでそちらを参考にされてください。
いちじくの挿し木⑥挿し穂の枝の形を整えてから挿す
剪定して保存しておいたいちじくの枝は挿し木する時に形を整える必要があります。
上下を間違わないように一番下の芽のある節から1cmくらいを残して枝を斜めにカットします。
鉛筆を削るように周囲をぐるりと削ってもよいです。
先端は尖らせる必要はありません。
こうして切り口の表面積を大きくすることでカルスを形成する部分を増やし発根しやすくします。
いちじくの枝の上の部分は節芽の上2cm以上の位置で真横にカットします。
上の切り口は表面積を小さくして水分の蒸発を防ぎます。
切り口には癒合剤を塗ります。
これで形は整いましたので、挿し木の下の切り口を傷つけないように2時間くらい水に挿してしっかり吸水させます。
いちじくの挿し木⑦挿し床の土
いちじくの挿し木の枝を水に挿している間に挿し床を用意します。
小さな鉢に小粒の赤玉土や挿し木用の土を入れたものを用意します。
1本ずつ小さな鉢に挿しておくと発根した時、鉢底から根を確認しやすいです。
土は保水性があり、かつ通気性があるものであれば上記以外でも大丈夫です。
いちじくの挿し木⑧挿し木の2つの方法
土に挿すときには切り口を傷つけないように先に割り箸などで挿し床に穴を開けてから挿し木の枝を挿します。
枝の長さの半分〜2/3が土に埋まるようにします。
垂直挿し
発根する節以外の芽を複数伸ばして育てることができます。
低い位置から複数の枝を出すことができますので樹高が低くても実がなる枝の数を増やすことができます。
ななめ挿し
複数ある芽の中で一つだけ育てる芽を選んで、その芽がちょうど土に顔を出すように挿し木を土に埋めます。
芽が上を向くように位置を決めて挿します。
他の芽がついているようならかき取っておきます。
こうすることで一本の枝を主軸としてまっすぐに育てることができます。
次の休眠期に好きな高さで主軸の剪定をすることで樹高をコントロールして樹形を整えます。
いちじくの挿し木⑨挿し穂の水の管理
いちじくを挿し木した後は土が乾かないように直射日光が当たらない場所で管理します。
乾燥を防ぐためにビニールをかけたりしてもよいでしょう。
ビニールをかける場合は日中高温になることがないように気をつけてください。
土の表面が乾き始めたら水をやり、土が乾かないようにします。
いちじくの挿し木⑩発根と挿し木失敗の原因
いちじくの挿し木は土挿しの場合、春先、十分な温度があれば2週間くらいで芽が膨らみ初め、発芽して葉が育ち始めます。
この時期は発芽して地上部が動いても土の中ではまだ発根していませんので決して挿し木を動かしてはいけません。
また葉が展開しているのに根がないので絶対に乾燥させてはいけません。
挿し穂の切り口から水を吸収できるように土が乾いてきたらたっぷり水やりします。
土の中は見えないのでこれがいちじくの挿し木の失敗の原因になりがちです。
いちじくの葉が展開してもすぐには動かしてはいけません。
くれぐれも焦らないように!
一度葉の成長が止まってから、再び成長を始めたら発根していると思ってください。
小さめの鉢に植えているので、根が育ってくるとすぐに鉢底から根が見えるようになります。
それまではそのまま小さな鉢で水を切らさないように育てます。
いちじくの挿し木⑪植え替えの時期
いちじくの挿し木後、植え替えする時期は時間でいうと挿し木してから3〜4ヶ月後、時期でいうと6月から7月にかけてです。
焦らずに、いちじくの根がしっかり育ってから6号〜8号鉢に植え替えます。
発芽時にはまだいちじくの挿し穂の切り口からは発根していないので、しっかり新しい大きな葉が続けて展開するようになるまでは植え替えしてはいけません。
ここで焦って早めに植え替えしてしまうとうまく活着できずに挿し木苗が枯れてしまいます。
鉢底から根が見えるくらいしっかり発根している状態になってから植え替えします。
6月以降なら温度も十分に上がっているので保温や保湿のためのビニールがけはもう必要ありません。
ただしずっとビニールをかけていた場合はいきなり直射日光に当てると葉が枯れますので、植え替え後、最初は同じように陽の当たらない場所に置き、少しずつ外気や日光に慣らしていきます。
植え替えの土は赤玉と腐葉土か堆肥が7:3の割合の用土を石灰で酸度を中性から弱アルカリ性に調整したものに元肥を混ぜて植えつけます。
1年目は実がならないと思います。
もし秋口に枝に実がついていたら生命力の強いさすがのいちじくでも1年目は実は摘果した方がいいでしょう。
9月ぐらいに少し追肥して、11月に休眠したら主軸剪定して翌年の新しい枝を待ちます。
いちじくの挿し木⑫2年目以降の育て方
2年目になればもう立派な苗の状態なので、数はそれほど多くなくてもいちじくの秋果が期待できます。
2〜3本の枝を伸ばしたら、その先に秋果が着きます。
3月、6月、9月に追肥をしながら育てます。
11月以降の休眠期に再び剪定をして翌年の着果に備えます。
2年目以降の剪定の仕方は通常のいちじくの育て方と同じになります。
下記の記事に通常のいちじくの育て方をまとめています。
いちじくの挿し木は翌年の成長が楽しみ
苗を買って手軽に楽しむこともできる果樹ですが、挿し木ができるものは一から育てる楽しみというのもあります。
いちじくやブルーベリーは挿し木で増やせることで知られていますが、特にいちじくは挿し木しやすい果樹です。
さてさて、全部で3種類のいちじく、ちゃんと育てられるでしょうか(笑)
今から来年の3月が楽しみです。