バラの花には香りの強さや、いくつかの香りの傾向、その混ざり具合で特に素晴らしい香りを持つとされる品種があります。
その代表格がイブピアッチェです。
実際その香り、花の形や色も素晴らしく、花もちよく香りのバラといえばイブピアッチェの名前が必ずと言っていいほどあがってくるのもうなずけます。
目次
イブピアッチェの品種情報
品種名:イブピアッチェ(またはイブピアジェ)
系統:HT(ハイブリッドティー)
花の形:大輪芍薬咲き
花色:ピンク
香り:ダマスクモダンの強香
樹高:1m〜1.5m程度
樹形:やや横ばり
作出:メイアン社(フランス)
イブピアッチェの名前の由来
イブピアッチェはスイスの高級ジュエリーウォッチのブランドPiaget社の創業家4代目のイブ・ピアジェ氏の名前をその由来とします。
ピアジェ氏はバラに大きな愛情と情熱を注ぎバラの世界に貢献したと言われています。このバラができた時、その香りに魅了されたピアジェ氏に対して、バラの世界への氏のそれまでの功績を称えてメイアン社がその名を冠したと言われています。
Piaget社のジュエリーにもPIAGET ROSEという名のジュエリーデザインのシリーズがあり、ピアジェ氏が心からこのバラを愛していたことが伺えます。
イブピアッチェの花の香りと特徴
イブピアッチェの花は開き始めの蕾のうちから強く香り、たった1輪でもほのかに部屋の中で香るほどの強香です。
イブピアッチェの花は大変華やかな大輪の芍薬咲きのため切り花としても人気があり、花屋さんでもひときわその香りが際立っています。
花弁の枚数も多く、蕾の時はそれほどの大きさには見えなくても徐々に花が開くにつれて、芍薬のように丸みを帯びた豊かな花の形へと膨らんでゆき、さらに咲き進むとまるでカーネーションのようにひらひらとした花の形に咲ききります。
上の写真の右側はイブピアッチェの系統の1つ、スイートイブピアッチェです。
芍薬のように丸く開き始めたところです。
左側の花は同じくイブピアッチェの仲間のトワパルファンが開ききり、カーネーションのような形に咲き進んだ状態の画像になります。
この時咲いた2つの花はこの写真の状態の時にはあまり花色に違いが見られませんでしたが、スイートイブピアッチェは蕾の時の花色が淡いピンクで、それらしい特徴が出ていました。
大輪芍薬咲きのイブピアッチェたちはこんな風に咲き進むにつれて花の形もどんどん変わっていくので見ていて飽きることなく、楽しいです。
花持ちもよく、鉢植えで咲いているものは気温が低い冬の室内では蕾が膨らみ初めて香りが立ち始めたところから2週間は楽しむことができました。
イブピアッチェの系統の品種
イブピアッチェには枝変わりしやすいという特徴があるようで、派生した品種がいくつもあります。
人気のバラですので交配種のイブ系品種もたくさんあります。
どのバラも元のイブピアッチェの特徴を受け継いでいるものが多く、芍薬咲きでダマスク系の強く香る品種が多いようです。
スイートイブピアッチェはイブピアッチェよりもわずかにピンク色が淡い花色。
クリームイブピアッチェは名前の通り淡いクリーム色の花色。
ナンバリング・イブと呼ばれイブNo.xとナンバリングされたイブピアッチェの交配種。こちらは6〜7くらいまで?あるのでしょうか。花色の濃淡の違いや斑入りのものなどがあります。
トワパルファンはイブピアッチェよりも少し紫がかった花色で花弁は少し薄めでしょうか、ふわりとした印象で、香りはイブピアッチェよりもさらに強く超強香と表現されることもあります。
上の写真はトワパルファンの小さな株に咲かせた初花です。
小さな挿し木苗に初めて咲かせた花ですのでまだ花弁の枚数が少なめでしたが、小さな株にもかかわらず大きな花で、香りも強く、イブ系のバラの力を見せつけられた感じでした。
季節や、その株ごとの違い、同じ株でも花の咲くタイミングなどによってイブピアッチェの花の香りは変化しますから、1つ1つ、花の香りをその時々で楽しむのもおすすめです。
基本はイブ系はどれもダマスク・モダンの強香がベースで、蕾の時から香り初めるものが多いです。
実際に育て初めて、イブピアッチェの花が咲くまで、本当に言われている通りちゃんとよい香りが十分に香るのか、綺麗な花が咲くのか、確かめようと思っていましたが、本当に素晴らしい香りと花です。
バラに興味のある方は切り花でも、ご自分で育ててみたい方にもおすすめです。
イブピアッチェの育て方
イブピアッチェの品種の特徴を踏まえた上での育て方を以下に紹介します。
基本的には一般的なバラの育て方で大丈夫です。
人気の品種ですので、苗も入手しやすく、花もしっかり咲いてくれるのでおすすめです。
イブピアッチェの薬剤散布について
イブピアッチェは特に病害虫に弱いということもありませんが、やはりバラですのでうどんこ病、灰色かび病、黒点病、ハダニ、アブラムシ、カイガラムシなどには注意が必要です。
ハダニは一般的に葉裏に葉水をかけると流せるし予防になる、と言われますが、残念ながらよほど強い水の噴射じゃないと洗い流すことはできませんので、丁寧に水で洗いながらブラシなどで擦り落とすか、薬を散布する必要があります。
いずれの病害虫も早期発見して対処することで、その後の手入れも楽になります。
病害虫に薬を散布する場合は薬剤抵抗性がつかないように、三種類くらいの薬をローテーションさせて使います。
含まれる成分ごとに、利用できる回数の制限があったりしますので、説明書をよく読んで使ってください。
効果は弱目かもしれませんが、薬剤抵抗性がつかず、何度でも使える物理的な駆除をする薬剤、粘着くんやアーリーセーブなどを上手に取り入れるのもおすすめです。
イブピアッチェは鉢植えでもOK
イブピアッチェは品種情報のところで書きましたが、樹高は高くても1.5mくらい、もちろん剪定などでもっと低くおさめることもできるので、鉢植えでも育てることができます。
株がやや横に広がるので、場所がない、という場合は支柱を立てで、横に伸びる枝を誘引することであまり広がらないようにするとよいでしょう。
ただし、風通しが悪くなると病害虫が出やすくなりますので、適宜余分な枝を付け根から切るすかし剪定で風通しや日照を確保します。
イブピアッチェの開花まで
イブピアッチェはハイブリットティーなので1本の茎が伸びた先に花が1つ咲きます。
四季咲きなので真冬真夏の寒暑が厳しい時期でなければ茎が伸びればその先に花芽がついて開花します。
14cmくらいの大きな花が咲きますので、イブピアッチェの苗が小さなうちは花芽がついても摘み取って株をある程度の大きさになるまでしっかり育てた方がよいです。
小さな蕾だと思っていても、開花が始まるとどんどんその蕾が膨らんで、最終的に花弁の枚数もたっぷりの大輪芍薬咲きになりますので、イブピアッチェの株はそれなりのエネルギーを消耗します。
苗が小さなうちの成長がゆっくりで、なかなか枝数が増えないかもしれませんが、今ある枝を徐々に太らせて丈夫に育てていくと、よいシュートが出るようになります。
イブピアッチェ、春の花後の剪定
イブピアッチェの花が咲き終わったら、なるべく早めに枝を切り戻し剪定します。
樹高をどの程度にしたいかにもよりますが、イブピアッチェの花のすぐ下の位置の葉は3枚葉ですので、少なくとも5枚葉のすぐ上のところまでは切り戻します。
樹形を整理して樹高を低くしたかったり、挿し木用の挿し穂を取りたい場合はもっと長く切ります。
イブピアッチェ、秋の開花のための剪定
秋に綺麗に花を咲かせたい場合は9月に入ったら、株の高さ2/3程度に切り詰めます。
この時新しい枝を伸ばしたい芽がある位置の少し上で枝を切ります。
芽は株の外側にあるものを選んで残します。
こうすることで、株の中が混み合うことなく新しい枝がのびのびと育ちます。
イブピアッチェ、冬の剪定
冬は春から1年間の成長の準備のための重要な剪定時期です。
この時期は外で育てている場合、寒さで葉が落ちて、枝だけの状態になっていると思います。
2月中旬くらいまでに、株の高さを1/3から1/2くらいまで、深く切り戻します。
細枝や内向きの枝は根元から切り取って株の形を思いっきりさっぱりさせましょう。
こうすることで春に伸びる新枝に栄養が十分に行き渡り、株の勢いが維持されます。
イブピアッチェの挿し木
イブピアッチェの剪定した枝を使って挿し木もできます。
バラの挿し木は簡単です。
よく活着しますので、剪定した枝の切り口を斜めに切って、2時間程度吸水させ、清潔な赤玉小粒の用土などに挿して、明るい室内の窓辺などで管理すれば、春秋なら1ヶ月程度で発根します。
小さなうちはデリケートですが、しっかり成長しますので、数を増やしたい方は挑戦してみてください。
バラの挿し木の方法は下記の記事で詳しく紹介しています。